硝子体注射・網膜光凝固術

硝子体注射(抗VEGF薬治療)とは

視力に一番大切な黄斑がむくんでしまう病態を黄斑浮腫といいます。黄斑浮腫を引き起こす疾患として、糖尿病性黄斑浮腫、加齢黄斑変性網膜静脈閉塞症、近視性脈絡膜新生血管などがあります。黄斑浮腫の発生にVEGF(血管内皮増殖因子)が強く関わっています。また、VEGFは新生血管の形成にも、強く作用していることが分かっています。 抗VEGF薬は、新生血管の活動性を抑制し、血管からの滲出を抑え、黄斑浮腫の病態の改善させる効果が期待できます。 抗VEGF薬を、硝子体内に直接注入することで、視力維持又は、改善が期待できます。 VEGFを抑えるために定期的な硝子体注射が必要となることが多いため、視力を維持するためには、定期的な通院が必要不可欠です。 また注射後に細菌感染が起こり、眼内炎になるケースも稀にあります。発症率は、約0.05%です。注射後に、合併症が起きていないかの診察が必ず必要です。

使用する薬剤

アイリーア:Eylea(アフリベルセプト:Aflibercept)

VEGFを抑えるだけでなく、PIGF(胎盤増殖因子)の働きも抑えます。 適応疾患は、中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫、病的近視における脈絡膜新生血管、糖尿病黄斑浮腫、 血管新生緑内障、未熟児網膜症です。

  • 加齢黄斑変性:導入期は1ヶ月ごとに3回注射を行い、その後は1~2ヶ月毎に1回の頻度で注射をします。
  • 網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫、病的近視における脈絡膜新生血管:黄斑病変の活動性が高い場合に、1回ずつ注射を行います。
  • 糖尿病黄斑浮腫:導入期は1ヶ月ごとに5回注射を行い、その後は1~2ヶ月毎に1回の頻度で注射をします。
  • 血管新生緑内障:新生血管による眼圧上昇時に1回注射をします。

ラニビズマブBS:Ranibizumab Biosimilar

ラニビズマブBSは、バイオシミラー(バイオ後続品)の1種であり、後発品にあたります。したがって、薬価が抑えられています。主にVEGFを抑える働きがあります。 適応疾患は、中心窩脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫、病的近視における脈絡膜新生血管です。

  • 加齢黄斑変性:導入期は1ヶ月ごとに3回注射を行い、その後は1~3ヶ月毎に1回の頻度で注射をします。
  • 糖尿病黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫:活動性が高い場合に1回ずつ注射を行います。

ベオビュ:Beovu(ブロルシズマブ:Brolucizumab)

主にVEGFを抑える働きがあります。 適応疾患は、中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫です。

  • 加齢黄斑変性:導入期は1ヶ月ごとに3回注射を行い、その後は2~3ヶ月毎に1回の頻度で注射をします。
  • 糖尿病黄斑浮腫:導入期は6週間ごとに5回注射を行い、その後は2~3ヶ月毎に1回の頻度で注射をします。 ベオビュは、非常に効果が強い薬であり、閉塞性血管炎といって、眼内に強い炎症反応が起こることがあります。その場合には、ステロイドのテノン嚢下注射などにより消炎を図る必要がありますので、注射後は密な経過観察が必要です。

バビースモ:Vabysmo(ファシリマブ:Faricimab)

VEGFを抑える働きと共に、Ang-2(アンジオポエチン-2)を同時に抑える働きがあります。 適応疾患は、中心窩脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫です。

  • 加齢黄斑変性:導入期は4週間ごとに4回注射を行い、その後は2~4か月毎に1回の頻度で注射をします。
  • 糖尿病黄斑浮腫:導入期は4週間ごとに4回注射を行い、その後は1~4か月毎に1回の頻度で注射をします。

硝子体注射の方法

まず点眼麻酔を行います。しっかりと消毒を行い、白目の安全な部位から非常に細い針を刺して、眼内に薬剤を注入します。

硝子体注射の適応となる病気

薬剤により適応疾患は異なりますが、以下の通りです。

硝子体注射の合併症

感染症

注射の針で目の表面に付いた細菌が眼内へ侵入し、感染症を起こすこともあります。重篤度が高い合併症ですので、早期に対処しなくてはなりません。術前・術後に抗菌薬を点眼し、感染予防することが重要です。注射後に、目の充血、痛み、視力低下が見られたら早急に受診をしてください。

眼組織損傷

注射針を入れる位置により水晶体に傷が付くと、白内障が進行する恐れがあります。網膜に傷が付くと、眼内の出血や網膜剥離を起こす可能性があります。

脳卒中や心虚血性疾患

抗VEGF薬は健康な血管を抑え、脳卒中や心筋梗塞、狭心症などの虚血性心疾患のリスクを高めると考えられています。しかし現在のところ、その因果関係ははっきりと解明できていません。最近、脳卒中や心筋梗塞を起こされた方は、申し出てください。

硝子体注射の注意点

感染症を防ぐため、施術当日は頭を洗う(洗髪)・洗顔は避けてください。首から下のシャワーは可能です。注射当日から、感染予防のための点眼薬を1週間ほど続けてください。翌日以降は、目に水が入らないよう気を付けながらの洗顔・洗髪・入浴が可能です。また術後の異常が生じていないかを確認するため、翌日には必ず受診していただきます。

※目の充血や痛み、視力低下、目やになどのトラブルや体調不良などがありましたら、翌日の受診日以降でも速やかにご相談ください。

硝子体注射の費用

片目 1割負担 3割負担
ラニビズマブBS 約8,500円 約25,000円
アイリーア、ベオビュ、バビースモ 約14,000~17,000円 約43,000~51,000円

網膜光凝固術(網膜レーザー治療)とは

網膜などを含めた眼底(眼球の後ろ側)の病変部に、レーザー光線を当てて焼き固める治療法です。疾患の進行を食い止めるために実施されます。 視力を向上させる治療法ではありませんが、現在の視力を維持しながら、疾患の悪化を防ぐのに有効とされています。特に網膜に起こる疾患に対して、非常に有効です。

網膜光凝固術の適応となる病気

など

糖尿病網膜症・網膜静脈閉塞症の場合

網膜光凝固術によって新生血管の増殖を抑制し、血液・血液の成分が漏れ出てしまうのを防ぐことができます。 硝子体出血や増殖性網膜症などの合併症を防ぐ治療ですが、黄斑(ものを見る上で必要不可欠な組織)の血流を保つことで、将来の視力低下も予防できます。

網膜裂孔の場合

網膜裂孔とは、網膜に孔が開いてしまう状態です。網膜にできた孔の周辺をレーザーで焼き固めることで、失明のリスクがある網膜剥離への移行を予防することができます。

網膜光凝固術の注意点

散瞳薬を差すと、「近くが見えにくい」「普段よりもまぶしく見える」といった症状がしばらく続きます。持続時間は人によって異なりますが、だいたい4~5時間ほどで効果が切れます。そのため術後に移動される際、車やバイク、自転車の運転は絶対にやめてください。散瞳薬を用いた治療を受ける時は必ず、バス・電車などの公共交通機関か、ご家族の方との送迎でご来院・ご帰宅ください。

網膜光凝固術の費用

  1割負担 3割負担
通常 約10,000円 約30,000円
特殊 約16,000円 約48,000円
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